横浜港北プレイルーム/会員様のお便り
保護者会員 石井 慶子 様 寄稿
幼児コピカ 石井 幸典 くん (六歳)

「これつくったところに行ってみたい」
幸典がそう呟いたのは四歳の頃でした。
「これ」とは、長男が五年程前に夏アトリエでつくった角柱のロボットでした。
その頃の幸典は私にくっついて離れない子でした。三回の転園に、仕事に学校行事にと多忙な中、週末は長男のスポーツに付き添って過ごす日がもう何年か続いていました。
小さかった彼には、大人の都合が優先されてしまい、質的にも量的にも満足のいく過ごし方ではなかったのかもしれません。
子どもにはできる限り、アナログな体験を、五感を使った体験をさせてあげたいと強く感じるようになっていました。
そして真剣に親子で満足できる過ごし方はないだろうかと考えていた時でした。
我が子の呟きにヒントをもらい、港北プレイルームの体験クラスに行ってみることにしました。
最初につくったのは「木端のクルマ」です。
白い下地の上に、彼は迷わず黒を塗り始めました。「暗い気持ちを表す黒」という固定観念から、少し心配になって見ていると、今度は青を混ぜ始めました。
すると先生は仰いました。「黒と青を混ぜて微妙な色の違いを感じているのですね」と。黒にも色々な黒、紺にも色々な紺があることはわかっているのに、子どもが暗い色を塗ると親というのはなぜ気を揉んでしまうのでしょう。
先生の一言でわたしの見方は一変。くり返し色を重ねたその濃紺は、深く味わいのあるブルージーンズのごとく素敵な色合いに見えてきました。
「できた!」と満面の笑顔を見た時、私は入会を心に決め、幸典も週末を心待ちにするようになりました。
通いはじめのうちはなかなか離れられなかった幸典。先生は部屋の隅で見学することを勧めてくださいました。とてもありがたかったです。その時に彼にもっとも必要だったのは、何よりも私と一緒にいる安心感だったと思うのです。
しかし、実際に活動を見ていると「こんなこともしていいの?」と弾けすぎる幸典の行動にハラハラすることもありました。色水のスプレーを紙ではなくて壁に吹き付けることに熱中したり、発砲スチロールを切ることだけに集中したり…。しかし、自分で色々やってみることで、本人が納得していることがわかってきました。
「プロセスやストーリーを楽しむ」という活動の奥深さも感じ、子どもの行動一つひとつを楽しく見守れるようになってきました。
そして、少しずつ幸典は変化してゆきました。
毎回の活動では、興奮して制作に参加し、感動と達成感で満たされていることがわかります。
色の変化だけでなく、何でも自分のやりたいようにやってみておきてくる形や素材の変化、そのスケールの大きさに「わあ!すごい!」と驚き、感動することが、幸典の心を元気に逞しくしているようで、アトリエの活動は彼にとって大切な心の栄養のようです。
そして嬉しいことに他のことにも意欲的に取り組むようになったのは、想像以上の出来事でした。
通い始めて一年後の夏頃から水泳や鉄棒など「ぜったいやる!」と自ら宣言して取り組むことが多くなりました。先生からの暑中お見舞いに返事を書きたい一心で一時間もかけて手紙を書き上げました。
どれも自分から言い出したことで、小さい体にやる気がみなぎっている感じがしました。
こんなに頼もしい姿になってきたのは、月齢による成長だけとは思えず、アトリエでそのままの幸典を認めてもらい、自発性と意欲を育てていただいたお陰だと思っています。「自分でやってみたい、やってみる」という姿勢や「できた!」という喜びが幸典の中に確実に浸み込んできているのだと思います。
いま、幸典は弾けるような笑い声で周囲を明るい気持にしてくれます。
お友だちのお母さんからは「ママにくっついて泣いていたゆきちゃんが思い出せないね」と言われるほどに変わりました。
先生の「みんなの中に輝きがある。このままの姿で大人になってほしい」というメッセージどおり、ほんとにこのまま、幸典の中にある輝きを失わずに、成長していってほしいと願っています。
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