全国から寄せられた新しいお便り
長女を迎えにアトリエのドアを開けると、そこには頭の上からつま先まで真っ青な子どもがいた。かろうじて、きょろきょろと動く目と、楽しそうに先生やお友達とおしゃべりする口だけは確認できた。そう、私の娘は真っ青な絵具の海で泳いでいたのだ。
「なんて面白いのだろう!」
この後どうやって車に乗せようかとか、明日には絵具が落ちるのかとか、そんな事は大した問題ではなく、この青い世界に身を任せ、とにかく自由に楽しそうに活動する娘の姿に、私は胸を震わせていたことを覚えている。
コロナ禍に次女を出産し、ほとんどの日々を家庭の中で過ごしていた。せっかくの “おうち時間” だということで、長女と一緒に絵具や粘土、寒天遊びなど様々な事を試してきた。でも、やはり足りないものがある。もっとダイナミックに活動をさせてあげたい。そして感動や喜びを人と共有してほしい。ちょうどその時期に見た、横浜港北プレイルームのクリスマスの積木の作品と、それを美しく灯すろうそくの明かりに感銘を受けた私は、勇気を出して門をたたいた。
私には2人の娘がいる。ものづくりが大好きで、『赤毛のアン』のようにいつも何かを想像している長女。そして、姉が一番の存在であり、几帳面でまねっこ上手な次女。このところは仕事で時間にも制限がついてきて申し訳なく思う日々である。私の願いとしては、 “自分の時間” に没頭したい長女を、思うがままに何かに集中させてあげたい。そして、姉の行動に左右される妹に、自分の納得いくものを最後まで仕上げる喜びを感じてほしい。
そんなある日の、アトリエの積木活動のこと。村田先生がつくったお城を長女がじっくりと観察して、そっくり同じようにつくり、長女がつくっているお城を次女がよく見つめて、そっくり同じようにつくったということを先生から聞いた。実際に作品を見てみると、似ているお城が3つ並んでいた。その横には、達成感を感じて目をきらきらと輝かせる我が子がいた。次女は、「ここには窓があるよ。こっちは池。お花も咲いているよ」と、教えてくれた。好きなことを無我夢中でやることが、自信につながると感じた。
毎回の活動で取り入れられている多種多様な素材や『童具』、集中できる課題、そして、ありのままの子どもの姿を大切にして下さる先生方のおかげで、アトリエは我が子の “居場所” となっているのだ。
先日、地域のあるお祭りでウクライナの青年達が出店しているブースがあった。テントには青と黄色の大きな国旗を掲げて、中では平和を象徴する缶バッチを作るワークショップが行われていた。優しげで可愛らしいイラストと、横に置いてある色鉛筆に惹かれたのだろう。長女は到着するなり「ここに行きたい!」と言った。きっと、最近興味をもっている世界地図を見ている時に、時事問題を伝えたことも少し心に残っていたのだろう。机に向かうと、迷うことなく鳩を薄い水色で塗り、その背景を青色と黄色で丁寧に塗って仕上げた。幼い娘ではあるが、伝えたいことが感じられる缶バッチだった。それは、自分の夢中になることと、知識や経験がつながった時のように感じられた。
絵具の中を泳いで、頭の上から足先まで青色になった素晴らしい時間。経験が土台となって、我が子の未来の生きる力につながるのだろうと思う。
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