わたしにとっての創造共育 わたしにとっての創造共育

『願いは同じ』神戸岡本プレイルーム支部長 柏木直子

私が生まれ育った神戸・岡本でアトリエを開設したのは2005年のことです。
当時私は大学を出て、アトリエとは全く違うジャンルの試験に挑戦しようと試験浪人になるつもりでした。何年かかるかわからないが資格を取り、自分のもつ知識で苦しむ人々を救済したい、日本人の一人として法治国家である日本をより高度で成熟した社会にするため貢献していきたいという漠然とした思いがありました。
そんなことは現実的に困難だと思ったからか、手近な駒を使おうと思ったのか、私にはより好適な仕事があると思ったのか、あるいはそのすべてからかもしれませんが、父に「取引先である童具館が主催するわくわく創造アトリエをビービーショップにつくりたいから、その講師にならないか」と提案されました。
提案と書きましたが、ほぼ命令、強制に近かったと記憶しています。
でも、父からの提案を私は断りました。
両親の仕事を手伝う、共に仕事をするということが当時の私にとっては非常に苦痛に感じたからです。
今思えば講師認定講座で童具館に伺った時も、他の支部の先生方にお世話になった時も、私はやりたくてやっているんじゃないんだ、嫌々やらされているんだという不遜な態度を露骨にしており、本当に失礼な振舞で申し訳なかったと思います。
では、なぜそんな気持ちの人間がアトリエ講師として曲がりなりにもスタートを切ったのかと言えば、初めて和久先生のご著書を読んだとき、非常に感銘を受けたからでした。
共育理念の崇高さ、未熟で不完全な生命を万物の調和と必然の世界に導こうとする共育の体系に美しさを感じました。
私がその教育行為の主体となることには力不足ではないかという懸念はありましたが、少なくとも私が子どもの頃にこんな教育があったら是非とも受けてみたかったと心から思いました。
やってみたいと思うような、あるいは効果的だと思うような教育的コンテンツや活動は、和久メソッドの他にもあります。ですが、うまく表現できませんが圧倒的な真善美への信頼感を和久メソッドからは感じたのです。
善き行いとは、美しさとは、真理とは、どれも到達したくても容易には到達できない高次のものです。一方で、素直になって考えてみれば、あるいは些細なものにも注視してみれば、日常に身近に存在しているものであるとも言えます。
正しさというのは、Aと思う人もいればBと思う人もいる。美や真理に関しても同様に言えます。それを価値観の多様性や、経済性や資源的な不足を理由にできない・やらないことを正当化するという消極的なものではなく、普遍的な真善美への信頼感をもとに教育を実践していくという自信に、心が動かされたのだと思います。
普遍的な真善美と書きましたが、もちろん一義的なものを指し、価値を統一させるための教育ではありません。
普遍性と特殊性、多様性と統一性とのバランス、あらゆるものごとの調和と必然を求めるという在り方は、特定の価値観にとらわれず、あらゆる可能性を保証するという均衡がとれた優れた考え方だと感じたからです。当時は直感的にそう感じましたが、アトリエを始めて、いろんな子どもたち、大人たちに出会い、関わっていく中で、すべての人間が愛と自由を求めて、万物のつながりの調和を求めて生まれてきた生命なんだということを文字ではなく、実感していくことができました。
みんな個別の悩みや苦しみを持ち、それから回避したり解決したりしようと日々奮闘されています。
悩みや苦しみが長く深いものであれば、愛と自由を感じることとは遠く、何のために生きているのかと自問することもあるでしょう。不自由さに苦しみ、そこから解放されたいという思いは自由を求める心です。
憎しみや裏切りに傷つき、不信感を強めるのは愛に対する渇望だと思います。それはみんな共通している筈なのに、迷いや悩みが尽きないのは方法論だけに陥って、原理原則を追求する機会が少ないためのように思えます。
悩める人に対して、過度な一般化はそぐわない場合もありますが、成長したい、よりよくしたいと願う人々の思いには共通する部分が必ずある筈です。その共通項を感じられるだけでも自己肯定出来る人も少なくないのではないでしょうか。
それぞれの願いや思いは千差万別と思いますが、集約すれば愛と自由を求める創造活動であるという原理原則を心に刻み、その可能性を信じたい、その可能性を「楽しい!」や、「うれしい!」という快の経験によってさらに伸ばしていきたいという願いが、アトリエ開設当初も今も私の中にあります。
2013年に第一子を授かった際に、力及ばずアトリエを閉室せざるを得ませんでした。当時は今の倍以上の会員様がいらっしゃいましたので、たくさんの方のご期待を裏切ってしまったこと、本当に申し訳なく心苦しい毎日でした。
そこから6年お休みしておりましたが、2019年10月に再開することができました。再開したもののまだまだ子育て中で、ライフワークと呼べるほどの以前のように猪突猛進はできないのが現状で、もどかしい限りです。
ただ時間が有限の中で、悩んでいる時間はもったいない!かわいくて可能性にあふれた子どもたちの成長は止められない!
今、自分にできることを最大限に行って、アトリエに来られている皆様と喜びを共有していきたいその思いが再開を決意させました。
一生をかけてこんなに素晴らしい共育体系をつくり上げてくださり、またアップデートし続けてくださっている和久先生に本当に感謝しております。無理やりにでも(笑)アトリエ開設を勧めてくれた両親にも感謝です。たった二千字でまとめるのは困難でしたが、振り返る機会をいただけてよかったです。私にかかわるすべての皆様ありがとうございます。

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